乗車券類6
次は、「定期券」です。
全国的には、現在ではICカードや磁気カード型のものが普及していますが、紙製の定期券を用いる事業者も未だ多数が存在しているようです。
山口市営の定期券は、時代としては当然のことながら、紙製のものが使われていました。
大人から子供まで広く利用されていたこれらの券面には、見覚えのある方も多いと思われます。
■縦に正副が分かれるタイプで、通勤割引が適用されていたと思われるもの。昭和30年代前半か。
「見本」のゴム印は、本券を印刷した「新興乗車券印刷(株)」(現:「シンコー印刷(株)」)のもの。
■上掲と同時期の、通学定期と思われるもの。台紙の色は淡いピンクとなっている。
なぜか年齢欄には「30歳」とのゴム印が。
■昭和34年~37年頃には横方向に正副が分かれるものが使われていた模様。
■同じく横型だが、フォント的には上記のものより後年製であると推定されるもの。
■横型の通学定期仕様。私もこれを使っていた記憶がある。昭和50~平成年間と推定。
これらは個人で使用されていたものが近年でも稀にオークションなどに出品されることがあるようですが、未使用品は珍しいのではないかと思われます。
やはり博物館級の珍品といえるでしょう。
乗車券類5
続いては、「観光乗車券」です。
それに伴い様々な乗車券類も発行され、駅や営業拠点で個人・法人に販売されたほか、贈答品等にも活用されたものと推測しています。
■山口(県庁前か?)~秋芳洞間の乗車券。料金は115円。昭和30年代と推定。
■子供用?の1日観光乗車券。料金は430円。100円の観光券付き。昭和50年代と推定。
■1日乗車券。金額は時期により任意に変更できるよう印字されていない。デザイン的には平成初頭と推定。
このように山口市営における観光事業の取り組みの一端を見て参りましたが、時事的な話題としては、平成30年9月に開始された観光周遊バス(同11月までの限定運行)の取り組みも、興味深いものですね。
乗車券類4
次は、「記念乗車券」の話題です。
そのため市政の広報的な要素を備えた物品の配布を行う事例もあり、現在でも多くが収集されています。
また、「記念品」が実際に使われるケースは稀であるため、まとまった現金の獲得手段としても、重要な存在であったと推測します。
以下に紹介するのは、経営が難しくなり始めた昭和末期前後に相次いで制作されたものです。
パズルピースのうち5枚が、各100円の乗車券になっている。
■上記から10年前の、山口市制50周年記念のもの。一般的なデザイン。昭和54年。
■山口県庁の新庁舎竣工記念。表紙はパスポート型の真っ赤なデザイン。昭和59年。
乗車券は、掲載のページとは別のページから切り離して使う。
■済南市(中国)との友好都市締結を記念したもの。昭和60年。
■昭和61年度の高校総体を記念したもの。団扇の「柄」の部分が乗車券になるという、尖ったデザイン。
記念乗車券は、その性質上、ユニークなデザインのものが多く採用されています。
パズルが運賃箱の小銭選別機に詰まったりしなかったのでしょうか・・・。
乗車券類3
乗車券類2
続いて、「乗車券」の話題です。
「乗車券」という単語は漠然としていて、少し分かりにくいかも知れません。
文字どおり「乗車」するための「券」なのだと思いますが、ワンマンバスしか知らない私にとっては、鉄道と同じように使用するのだろうと推定はするものの、実は詳しい使用方法はよく分からないものになります。
従って、以下のご紹介には誤りがあるかも知れませんので、予めご了承ください。
■何も書かれていない質素な「乗車券」綴りの表紙。「見本」のゴム印が印象的。
そうした経緯ながら、この「乗車券」とは、現物から逆に使用方法を推定すると、恐らく車掌が常時携行する物品のひとつで、乗車時または走行中に料金を収受しながら、乗客側に交付するものなのではないかと思われます。
券面には各停留所のほか、日付、時刻、上下線や乗換等をチェックする箇所があり、車掌が乗客から聞き取った内容を、直ちにペンで記入し易いよう配慮されているように見えます。
■乗換時の乗車券。こちらの表紙面には題字がある。
■乗換券の印字色は緑。時刻の記載欄が大きい。
バスの黄金時代は乗客を収容しきれず続行便を出す有様だったと伺いますので、満員の車内でこうした細かい集札・集金業務を行う車掌の労働環境とは、現代からみれば相当過酷を極めたことでしょう。
記憶力、会話力、計算力などを試されそうです。
この冊子の性質上、こうした状態で存在することは極めて稀な事例と考えられます。
博物館級の逸品として、保管しなければなりません。
乗車券類1
今度は乗車券類の話題です。
現代における公共交通の料金収受システムは、定期券を含め「ICカード」を用いたものが都市部を中心に主流となりつつありますが、バスの場合は、地域によっては「バスカード」の取り扱いを行う事例も多くが残されています。
山口市営では、その営業期間においては遂にバスカードの導入すら実現せず終業してしまいましたが、それ以前には、全国各地のバス会社と同様に、車掌時代から様々な工夫において料金を収受し、また観光振興にも活用されるよう、知恵を絞った営業企画も展開されていたようです。
ここでは、そうした営業の一端を垣間見る、乗車券類についてご紹介していきます。
先ずは、私も大変お世話になっていた回数券からです。
(※画像は何れも完全に失効した旧山口市交通局のものです。加工済ですが悪用等は厳に慎んでください)
券面は印刷のほか、右から2番目のようにゴム印方式のものもある。
回数券は、比較的近年まで定期券と並んでバスの料金支払いシステムにおける双璧をなす存在として、古くから存在してきました。
山口市営においても年代によって様々な券面を持つものが確認されており、考古学的に収集していけば、極めて深い世界に陥るのはことは間違いありません。
■「公用」と印字されたものは、市職員の移動用か。20円券の場合、11枚を200円で販売。
ただ、私の場合はハードウェアと比較して、こうしたソフト面に係る物品の収集はどちらかと言えばこれまで消極的でしたので、あまり多くを保有していませんでした。
従って、ここに掲げる私が保有するものは、近年、諸先輩方よりまとめて譲受したもので、決して年月をかけて収集してきたものではありません。
■こちらも年代不明ながら、フォントや金額からして比較的近年のものと思われる。
■こちらも比較的近年のものと思われる綴り。「980円」は小郡駅~県庁間用か。
こうした経緯で手元にある乗車券類ですので、分析や整理は私にとっての今後の課題と言えるでしょう。
続きます。
整理券7
「Ⅲ」型と同様に、今度は「V」型発行機の詳細をみていきましょう。
先述のとおり、山口県内での「V」型発行機は未だ最前線に投入される現役機種であるため、その正常品の入手は困難となっていますが、例えば関東方面では、新型発行機の導入に際して放出される個体も多くなっています。
私がネットで購入した「V」型発行機もそうした個体の一つで、社名ゴム印は山梨県の会社のものが装着されており、各種表記から推定すると、平成元年8月に製造されたと思われるものです。
筐体の色は、こちらも事業者によって様々あったと思いますが、山口市営では標準色と思われる吹付塗装の黄色が一貫して採用されていました。
「Ⅲ」型の焼付塗装と比較すると見劣りする外観ですが、整備性や経済性を考慮すると、妥当な判断だと思われます。
■遂に入手した「V」型。筐体の角や、白熱灯が背後にある正面アクリル板にダメージを受けた個体が多い。
配線は伝統?の丸型31ピンカプラーのみ。
「V」型最大の特徴は、何と言っても薄型となった外観に尽きますが、その要因は、技術革新と、内部構成部品の配置見直しによるものでした。
主にはモーターや基盤、各種電子部品の小型化が進展したことにより、「Ⅲ」型と比較して根本的な作動原理に変更を加えることなく各部品の配置転換が可能となり、なかでもロール紙の設置位置を機体下部に移設したことが、最大級の効果をもたらしています。
■印刷室下部に設置されたロール紙。この配置は、サーマル式となった現行機種にも承継される。
この個体には、大量の廃券が残されたまま。
この配置転換により、「V」型の機体内部は、余裕のあった「Ⅲ」型と比べるとタイトなものとなりましたが、ロール紙交換の手間や重量軽減の効果は大きかったものと思われ、小田原機器社のシェア維持、又は拡大に貢献したものと考えられます。
■外観は「Ⅲ」型と大きく変わっても、内部の作動原理には殆ど変更がないことが分かる。
■券出口シャッターの開閉を行う強力な電磁石。鉄道模型用の15V電源ではなく、24Vでないと作動しない。
■大小多数の歯車が重なる時計のような機関部。少ない動力源で最大の仕事を得るメカ設計技術の粋。
以上、みてきたように図らずも私の場合は「Ⅲ」型と「V」型の両方を入手してしまった訳ですが、産業機械の技術史として鑑賞すると、文系素人でも面白いものです。
その後、購入した「V」型を操作盤と共に鉄道模型用の電源に繋いでみますと、内部の一連の動作は眺めているだけでも楽しく、つい何枚も発券してしまいました。
ただし、鉄道模型用の15V程度の電源では、出口シャッターが電圧不足のためか作動しないため、手動で降ろしてやることによって動きだすという有様でした。
■発行した整理券。15Vでの動作は緩慢ながら、見ていてとても面白い。
現代のサーマル式発行機は、印字装置がさらに小型化され、遂にはロール紙が2本も収容できるようになり、さすがに昭和期に設計された機械たちとは比較にならないほど飛躍的に性能が向上しているようです。
近い将来、インク式の発行機は過去のものとなるでしょうから、本機も大切に保管したいと考えているところです。